生物系研究部第3生物活性研究部
研究方針
第3生物活性研究部では、生体反応の素過程を、分子生物学・生化学(酵素学)・細胞生物学の手法を駆使して解明することを目的としています。その中から生まれる創薬研究を自ら推進するとともに、新規化合物の作用機序検証系の構築などを行い、微化研全体の創薬研究を技術面から支えています。具体的には、微生物感染による疾患発症、特にヘリコバクター・ピロリ感染による胃がん発症の分子機構解明を主軸とした研究を展開しています。また、インフルエンザ、B型肝炎等のウイルス性疾患の発症機序を追求するとともに、得られた知見に基づき臨床現場での活用を目指した応用研究に取り組んでいます。さらに、難治性筋疾患に関する創薬研究を推進しています。
メンバー
※メールアドレスの[at]は@に書き換えてご利用ください部長 畠山 昌則 mhatakeyama[at]bikaken.or.jp »略歴
部長 清水孝雄 (兼任) tshimizu[at]bikaken.or.jp
主任研究員 滝沢 直己 takizawan[at]bikaken.or.jp
主任研究員 林 剛瑠 thayashi[at]bikaken.or.jp
上級研究員 荒川 正行
上級研究員 菊地 逸平
上級研究員 山﨑 学
博士研究員 大木 拓也
博士研究員 William J. Valentine
特任研究員 下遠野 邦忠
テクニカルスタッフ 伊藤 敦美
テクニカルスタッフ 岩田 由紀子
テクニカルスタッフ 山本 祐衣
大学院生 丹羽 一博
テーマ
テーマ概要
1. ヘリコバクター・ピロリ感染を基盤とした胃がん発症機構の研究
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は人の胃粘膜に棲息する螺旋型のグラム陰性桿菌であり、世界人口のおよそ半数に感染していると推定されています。1982年にMarshallとWarrenにより同定されて以来、ピロリ菌の持続感染は萎縮性胃炎ならびに胃潰瘍等の胃粘膜病変を引き起こすことが明らかにされてきました。しかし、ピロリ菌感染者の多くは無症候性に経過し、胃粘膜病変を発症するのは感染者の一部です。我々は、これまでの一連の研究を通して、cagA遺伝子を保有するcagA陽性ピロリ菌の持続感染が胃がん発症に必須の役割を担うことを明らかにしてきました。当研究室では、ピロリ菌感染を基盤とする胃発がんにおける細菌性がんタンパク質としてのCagAの役割の解明ならびに発がんメカニズムに立脚した治療開発を目指し、分子から個体レベルに至る多角度から先端的研究を進めています。また、CagAによって撹乱される宿主側の標的分子やシグナル伝達経路について、CagA非依存的なアプローチからその生理的・病態生理的機能に迫ることにより、より普遍的な生命現象の理解を目指した研究に取り組んでいます。
▶ 成果解説
2. RNAウイルス増殖機構解析と天然物を中心とした阻害剤探索
ウイルス学を中心として生化学、細胞生物学、バイオインフォマティクスなどの手法を用いてウイルス増殖メカニズムの基礎研究を行っています。基礎研究により得られた知見を活かして、抗ウイルス活性を指標とした天然物スクリーニング、得られた化合物の構造生物学的解析、誘導体展開などを他の部署と共同で行い新規抗ウイルス薬の発見を目指しています (A)。単離した化合物は詳細な作用機構解析も行い、抗ウイルス薬としての開発のみでなく、ウイルス増殖メカニズム解明にも還元することを目指しています。現在は主にインフルエンザウイルスをターゲットとして研究を行っており、インフルエンザウイルスの増殖を阻害する化合物を研究所独自の化合物ライブラリーや天然物ライブラリーから単離しています (B)。インフルエンザウイルス増殖解析の基礎研究としてはウイルスゲノムRNAの機能に着目をして研究を行っています。インフルエンザウイルスゲノム上に形成されるRNA二次構造の網羅的解析から新規のウイルスRNA二次構造を同定しており、このRNA二次構造のウイルス増殖における機能や薬剤標的としての可能性を検討しています (C)。
3. B型肝炎ウイルス(HBV)研究
4. 難治性神経筋疾患に対する新規治療法の開発
神経筋接合部(NMJ)強化化合物の探索
後シナプス側のニコチンアセチルコリンレセプター(AChR)の凝集活性に着目し、天然物資源・化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを実施。